森のしくみを学ぶ 2014年12月05日

女の子や子どもたちも気軽に森に親しめる機会を

人と森林が仲良く暮らしていくためにできること。
ちょっと考えてみませんか。

樹木医
高部ほなみさん

【立木伐採の仕事を経て、森林ボランティア活動の道に】

岐阜県の山間部にある小さな町で生まれ育った私にとって、森や木は身近な存在でした。大学で森林生態学を学んだ後、立木伐採を手がける豊田市内の企業に就職しました。そこでの経験から、人が樹木と共存していくことの難しさ、おもしろさにはまり、樹木医の資格を取得。退職後、森林に関わる活動に様々な形でボランティアとして参加するように。活動を通して、森林に興味があっても関わり方がわからない女性や子供がたくさんいることを知り、2012年春に同世代の女性数名で「旭(あさひ)木の駅プロジェクト女子部」を発足させました。

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【スギやヒノキが生長しすぎた森林は満員電車のように窮屈な状態】

豊田市は市域のおよそ70%が森林。市街地からクルマを30分ほど走らせれば、美しい緑を目にすることができます。でも、一見豊かに見えるその森林の中には、荒廃が進んでいる場所も少なくありません。木はたくさんあるのに、どうして荒廃してしまうのでしょう…。実は日本の森林の多くは、戦後の拡大造林政策によって盛んに植栽され、その後、林業の衰退から手入れが行き届かなくなってしまったスギやヒノキの人工林なのです。生長しすぎたスギやヒノキは太陽光を遮り、林の中はいつも真っ暗。下草も生えない“緑の砂漠”状態で、雨が降ると表面の土が流されてしまいます。ひどい時は土砂災害を起こすことも。放置すれば、本来そこに住むはずの生物たちにも影響が出て、森全体の生態系が崩れてしまうかもしれません。

森林の荒廃は、最終的に私たちの生活と直結する大きな問題なのです。

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【仲間を募集中!まずは体験イベントからぜひ】

手入れが遅れた人工林にまず必要なのは、適正な間伐です。間伐によって林の中に太陽光が入ると、背の低い広葉樹やさまざまな草が地面を覆うようになり、木が元気になって本来の森の姿・機能を取り戻していきます。そんな森のしくみを女性の視点で伝え、私たち人間がどのように森林と付き合っていったらよいかを考えるきっかけづくりになれば…との思いで活動しているのが「旭木の駅プロジェクト女子部」。メンバーはもちろん、女性だけ! 「森林ボランティアに興味はあるけれど、私にできるかな」と感じている方も気軽に参加できる多彩なイベントを企画・開催しています。たとえば、チェーンソーではなく、のこぎりを用いて間伐作業を体験する初心者向けのイベント。「緑の中で汗を流すと気持ちがいい」「木を伐り倒した後、頭上に広がる青空の景色に感動した」という声も多く、口コミで参加者が増えています。他にも、間伐体験と温泉・グルメをセットにしたツアーイベントや、地元の方から東海豪雨災害(※2000年9月11日〜12日にかけて、愛知県名古屋市とその周辺で起こった豪雨災害。各地で浸水害や土砂災害が発生した)の体験談を聞く会、自然とふれあって森の大切さを学ぶ親子イベントも。いい意味で「がんばりすぎない」「マイペース」なところが女子部ならではの持ち味ですし、長続きの秘訣にもなると思っています。

そして、もっと森林について学びたくなった方には、私もスタッフを務めている「とよた森林学校」をおすすめしています。その1講座である「初級間伐ボランティア講座」には毎年数名の女性が参加し、卒業後は実際にチェーンソーを持って間伐ボランティアをしています。2013年2月には、私も含めた卒業生女性たちの交流の場として 「矢作・森の女子会」が発足しました。

森との関わり方は人それぞれ。まずは、気楽に一歩を踏み出してみませんか?

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「旭木の駅プロジェクト女子部」では、間伐材を使った手作りエコ雑貨の企画・販売も。

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2013年2月に豊田市駅前のシティプラザで行われた「いなかとまちの文化祭」でのひとコマ。“矢作・森の女子会”でブースを出展し、子どもたちに丸太切りを体験してもらいました。

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高部さんが参加している「旭木の駅プロジェクト」へのお問い合わせ
愛知県豊田市杉本町三斗成1-3
TEL:0565-68-1113
http://kinoeki.org/

●森林について学びたい方
とよた森林学校
http://woodytoyota.net/gakkou/

●その他の豊田市の主な森林ボランティア団体
矢作川水系森林ボランティア協議会
http://www.yamorikyou.com/

森の健康診断
http://mori-gis.org/

 

取材日:2013年3月