このまちの恵みを味わう 2014年12月19日

豊田市の「農ライフ創生センター」での研修を経て
農家デビュー

食べた方の「おいしかったよ」の声が励み。
良い作物を安定的に作り、持続可能な農業ビジネスをめざします。

村正農園 村松正博さん

 

【自慢のスイカは直販ができる個選で出荷】

6月から7月は、私が手塩にかけて育てた自慢のスイカが収穫の時期を迎えます。今年も大玉で甘く、シャリ感のあるおいしいスイカができました。

当園はスイカと白菜をメインに栽培しており、スイカは農家が個別に選別・出荷する「個選(こせん:個人選果の略)」という出荷方法を、白菜はJAあいち豊田を通した「共選(きょうせん:共同選果の略)」という出荷方法をとっています。個選のいいところは何といっても、お客様の声を直接聞けること。出荷先のショッピングセンターでお買い求めになった方が「おいしかったから、もう一度食べたくなって」と、ラベルに書かれた農園名を頼りに畑まで直接足を運んでくださることもあります。「農家になってよかったなあ」と思う瞬間ですね。

941131_399361136843463_673241920_n

【サラリーマンから念願の新規就農】

高校生の頃から、職業としての農業に憧れがありました。サラリーマンで一生を終えるより、手に職を付け、自分のがんばりが収入という形で返ってくる自営業に就きたかったのです。いわゆる独立志向が強かったんですね。

でも、名古屋市内の非農家出身の私には農地もコネクションもない。高校卒業後、土木会社に就職したのですが、どうしても就農への夢をあきらめきれず、25歳の時、修業のつもりで農業法人に1年勤めました。

栽培技術を学び、「さあ、いよいよ独立だ」と意気込んだのも束の間、それまで考えもしなかった農地取得の厚い壁にぶつかります。農家になった今はよく分かるのですが、農業というのはその土地を取り巻く地域社会・経済と密接につながった産業なんですね。だから農家の人は、先祖伝来の農地をたやすく他人に貸すようなことはしません。藁にもすがる思いで行政の就農相談窓口をいくつも訪ねたのですが、どこもつれない答えでした。

そんなある日、知ったのが豊田市の農業研修施設「農ライフ創生センター」。研修期間修了後、豊田市内の農地をあっせんしてもらえると聞き、希望の光が見えた思いでした。そして迷わず豊田市へ移住し、「担い手づくりコース」を受講。2年後、約束通り1.1ヘクタールの農地を借りることができた私はようやく農家デビューを果たし、現在に至ります。

970566_399361980176712_1154048670_n

【目標はビジネスとしての農業成功】

スイカと白菜を栽培作物に選んだのは、肥沃な土や昼夜の寒暖差が大きい地の利を生かしたいという気持ちに加え、ビジネスとしての農業成功をめざしているから。スイカと白菜は重量野菜で、栽培が難しい上に手間がかかるため、生産者が減少の一途を辿っています。でも、生産者が減っているからこそ、そこに商機があると私は考えました。

農業で収益を得るためには、良いものを安定的に作ることが重要です。どんなにおいしい料理を作るシェフもパティシエも、収益なしでは事業を続けられないでしょう。それと同じです。ポイントは、機械などを使って効率化できるところと、人の手をかけるこだわりどころをきちんと見極めること。

たとえば今日は、スイカの皮の色ムラをなくし、全体を甘くするための「玉直し」という作業を行っています。接地している部分に日が当たるよう1個1個持ち上げて位置をずらしていくのですが、重くて低い場所にあるため、かなりの重労働。でも、こうした、たとえ重労働であってもスイカの味を左右する作業には手間や時間を惜しみません。

農家デビューをして今年で7年目、JAあいち豊田や地元の生産者仲間にも助けられ、専業もようやく軌道に乗ってきました。今後はブルーベリーなど、栽培品目を増やしていく予定。消費者の方と交流できる機会も大切にしていきたいですね。「農」で豊田をもっと元気にする。微力ながらそのお手伝いができればと思っています。

1002258_399362920176618_1578634280_n

問い合わせ

村正農園
豊田市御船町滝37番地
TEL080-3064-8315
http://blog.goo.ne.jp/muramasasanage

農ライフ創生センターとは
豊田市とJAあいち豊田が共同運営する農業研修施設。修了後,、希望者に農地10アール以上をあっせんしてもらえるのが特徴で「担い手づくりコース」「農地活用帰農コース」などが用意されている。平成16年の開所以来、平成24年度までに修了生のうち300人以上が就農。
http://www.city.toyota.aichi.jp/shisetsu/shisetsunougyou/souseicenter/index.html

 

取材日:2013年6月